みずみずしい感性

2024.11.06

みずみずしい感性

出勤時、聖和キャンパス手前の坂道で様々な虫の音に出迎えられ、キャンパスに入ると、色づき始めた木々の葉に目を奪われます。移り変わる自然の美しさに身を置くことで、心穏やかに何とも豊かな気持ちにさせられます。

 子どもたちの心は、子どもたちのいつも傍にいる保護者、保育者のあたたかく受け止められているという関係の中で、太陽の光、風、植物、虫、動物などの自然との出会い、音楽・絵画、そして人と人との関わりによって刺激を受けて育っていきます。つまり、人の心のこもった語る「言葉」と「関わり」、また「自然界の営み」が、子どもたちの感情、感覚の育ちに大きく影響してきます。乳幼児期に豊かに感情、感覚が育てられることによって、様々な外界からのサインを敏感に受けとめ、自分自身がそれをどのように感じるかが「感性」なのです。具体的な体験によって、私たちの心は動かされます。心が動かされることによって感情は豊かになり、感性が育てられていきます。

 科学技術が発展し、子どもたちの置かれている環境は大きく変化してきています。AIの発展、エアコンによる寒暖の平均化、旬があまり感じられなくなった食事、音にあふれている生活・・・・・。感覚もそのような環境だと鈍化していきます。だからこそ、具体的な体験の中で、よく見る、耳を傾ける、静寂の時、季節を感じることを大切にしたいです。

 キンモクセイの花の香りを感じる、ムラサキシキブの紫色の実・ザクロ・アケビを見つける、葉っぱの色が赤色に変わっていくことに気づく、いろいろなどんぐりの種類を発見する、先日収穫したサツマイモを味わうこと等々、身近な生活の中から自然の持つ豊かさに気づかされます。「感性」は、何気ない生活の中に豊かにあります。子どもたちはそれを直感的に、情緒的に感じます。そしてその感性が豊かになればなるほど、ものごとを見る目が確かになり、深まっていきます。「感性」は教えられるものではありません。周りの環境から、子ども自身のからだで感じ取っていくものなのです。

子どもたちが、いつまでもみずみずしい感性を持ち続けるために、これからの季節、夕日が沈んで行く様子、そして変わっていく夕焼けの空をしばらく立ち止まって見る余裕をもち、子どもたちにあたたかなまなざしを注ぎながら、よく見る、よく耳を傾けることを大切にし、不思議さや驚きの心に寄り添っていきましょう。

F I 赤木 敏之